GTR(R34)入庫したのでエンジン屋さんだったころの自分を懐かしみました。(個人記)
タイヤ交換のご依頼でご入庫いただきました。
R34。 GTR。 うーん懐かしい。
何を隠そうこれを書いている私は昔レーシングカーのエンジンをメンテナンスするガレージにおりまして、
懐かしついでに自慢をしようと思います。
富士スピードウェイの言えば大御神レース村。
村長の近藤進治社長が運営している『近藤レーシングガレージ』
FUJIで開催されたF1の事などこちらのHPには数々の伝説が書かれています。
私が在籍していた時は、
三菱のワンメイクレース ミラージュカップ(CJ4A)のエンジン10チームくらい
N1耐久レース選手権(スーパー耐久レース)2チーム、日産プリンス千葉(エクセル)、日産アルティア(プローバ)
この時はまだR33GTRですね。当時、私もメカニックで参加した十勝24時間の懐かしい動画もあったので貼ります。
1996年ですからもう27年前になるんですね。どこかに自分が写ってるんじゃないかと探しましたが発見できず。
スリックタイヤの進化と、タービンの変更などR32からR33への性能アップの恩恵でラップタイムも飛躍的に短縮されましたが
基本構造がR32と変わっていない当時のRB26DETTは横Gに対応できず悲鳴を上げていました。
コーナリングの横Gでエンジン内のオイルが偏ってしまい、オイルストレーナーがエアーを吸ってしまい
メタルが一瞬で焼き付いてドカン。繰り返し繰り返し何機も壊れリタイヤするGTR。
練習、予選、決勝、各チーム壊れに壊れて仕方なく各チーム
ブーストを下げて(パワーを)エンジンを壊さない様に走らせるのが
精一杯で、クラス2のランエボに追い回される始末。
我慢の戦いが続いていたのですがある部品の開発成功がゲームチェンジャーとなり、
いよいよGTRが真の性能を発揮することになったのです。
ストレーナーとは、エンジンオイルを吸い込んでエンジン全体にオイルを供給する
ストローみたいな役割をしています。
通常、オイルストレーナーの吸い口の位置は固定されています。
吸い口は基本的に循環するオイルに浸かっているのでエアーを吸い込むことはありませんが
レースではコーナリングで強い横Gが発生するため遠心力でオイルが偏ってしまいます。
ストレーナー吸い口位置は固定されていますから、本来浸かっているはずの吸い口が露出し、
空気を吸い込んでしまい、クランクシャフトやコンロッドが潤滑されず一瞬で焼き付き
エンジンが壊れてしまいます。
実はRB26もR32時代からノーマルエンジンでもこの横G対策が施されていて、
ストレーナーの吸い口を囲うバッフルと、オイルパンにはリブが作られているのですが
実はこれが仇となってしまい横Gで偏ったオイルが吸い口に戻りにくくなりさらに事態を悪化させていたのです。
NISMOもこの事態には頭を悩ませていて、各社必死に対策するもなかなか良い方法が見つからない中
ある日なにかを思いついた近藤社長が
『おーいH君、これ、えーっと、これがこうかなってこんな感じの試作作ってみて』
手書きで書かれたイラストでした。
コーナリングGで偏るエンジン内のオイルを追いかける仕組みです。
私はオイルパンとにらめっこして吸い口をオイルパンの底から3㎜高さに設定し
隙間を隅から隅まで届く回転直径を割り出しました。
その中心にストレーナーの回転センターを持ってくるようにオイルポンプとパイプで接続。
ストレーナーの回転はベアリング。ベアリングが入るケースを作ってやかんの様な吸い口を
取り付けました。
オイルパンを右に傾けると吸い口が右にぐるっと移動。
オイルパンを左に傾けると吸い口が右にぐるっと移動。
最初はエンジンの傾きになかなかうまく追従せず、頭にボルトを取り付けて重しにして調整。
※ボルトは振動で落ちる可能性があるため、最終的には真鍮を溶かして錘にした。
何か月かかったか忘れましたが完成したのが回転式のオイルストレーナー。
不格好ですが歴史を変えたと言っても過言ではない?!回転式のオイルストレーナー。
右から2番目、25歳の僕です。
懐かしいな!